フィラリア症とは蚊を中間宿主とするフィラリア(犬糸状虫)が、犬の心臓や肺動脈に寄生することで、様々な症状を引き起こし、病状が進行すると命にかかわる重大な病気のひとつです。
この病気は予防が可能で、近年では予防意識が向上し、飼い犬のフィラリア予防をきっちりされる方が増え、フィラリアによって死亡する犬の数はぐんと減りました。
そして、犬のフィラリア症の認知度が上がったことで猫のフィラリア症にも関心が高まっています。
猫もフィラリアにかかるの?
蚊が媒介する寄生虫なので、もちろん猫にも感染する機会は十分にあります。
しかし、このフィラリア症の原因であるフィラリアは、犬糸状虫という名前からもわかるように、おもに犬を終宿主とします。
そのため、フィラリアは猫の体内で成長することが難しく、犬のように心臓まで達することはまれで、病態にも違いがあります。
猫のフィラリア症の症状
- 咳
- 呼吸困難
- 食欲不振
- 元気消失
- 嗜眠
- 下痢、嘔吐
などがあげられますが、フィラリア症に感染している猫の30%は無症状といわれており、体内のフィラリアが死滅する時に、急激なアナフィラキシーショックによる突然死を起こす場合があります。
アナフィラキシー反応の症状はわずか数匹のフィラリア寄生で発生するという報告もあり、突然死を起こした猫を解剖してみて初めてフィラリアの存在に気付くケースもあります。
また、肺や呼吸器にダメージをうけることによる慢性呼吸器疾患の原因にもなり、喘息と診断されている猫のなかにはフィラリアの存在が隠れていることも少なくありません。
フィラリアの検査方法は?
- ミクロフィラリア検査(フィラリアの幼虫を検出)
犬と違ってフィラリアの寄生数が少ない猫の場合、幼虫が検出されることはほとんどないため、ミクロフィラリアの検出はまれです。 - 抗原検査(フィラリアの成虫の成分を検出)
こちらに関しても、オスだけの寄生であったり、寄生数が少ないと誤って陰性と検査結果がでることがあります。
このように、猫のフィラリア症は検出することが非常に難しく、発見されずにいることが多い理由です。
猫のフィラリア症の感染率
10匹に1匹の猫がフィラリアに感染していたという報告があります。
犬糸状虫抗体保有状況
地域猫における抗体陽性率11.0%(東京都世田谷区・品川区・国立市、千葉県浦安市)
家庭飼養猫における抗体陽性率11.5%(新潟県三条市・見附市)
出典:佐伯英治 Clinic Note No.55:34,2010
完全飼育猫の場合や、地域によっては、おそらく感染率は変わると思いますが、意外と多いと思いませんか?
猫のフィラリア症の治療方法
病状に対する治療と、虫体を駆除する治療がありますが、成虫駆除薬の投与はアナフィラキシーショックを起こす危険があるため、推奨されていません。
フィラリアが自然に死滅するのが2~3年と言われているので、その間、フィラリア虫体に対する免疫反応を抑えるためにステロイド剤を投与したり、気管支拡張剤を使った対症療法を行います。
また、フィラリア虫体が後大静脈へ移動した状態であるVCS(大静脈症候群)に陥った場合は外科的治療が適応となります。
予防はどうすればよいの?
月に1回の予防薬の投与で予防できます。投与期間は蚊が出始めた1か月後から蚊がいなくなった1か月後まで投与します。
これは一般的に予防薬と呼ばれているお薬は、実は駆虫薬で、体内に入ったばかりの幼虫ではなく、少し成長した幼虫を効果的に殺すことができるためです。
※たとえ涼しくなって蚊がいなくなっても、最後まで忘れずにきっちりと投与することがとても重要です!
予防薬にはチュアブルタイプやスポットタイプがありますので、かかりつけの獣医さんに相談しましょう。
まとめ
猫のフィラリア症は様々な重篤な症状を引き起こす怖い病気です。しかし、確定診断が難しいため、見逃されやすく注意が必要です。
まだまだ認知度の低い猫のフィラリア症ですが、予防できる病気なので、きちんと理解することが大切です。